2016年1月23日土曜日

12球団ファンクラブ本とアンチ断捨離

台湾が常夏だなんて誰が言ったんだ。

基本的に夏の暑さしか想定していない家の造り。基本暖房がないという思い切りの良さ。
素直で楽天的な台湾が好きで嫁にまで来た私ですが、さすがに「寒い時はいっぱい着ればよい」という単純すぎるリスク管理に憤りすら感じているこの頃です。

しかも台湾ではなぜか一酸化酸素中毒による事故が非常に多く、みんな一酸化炭素を極端に恐れているので、どんなに寒くても窓を開けたがります。ダンナとの攻防のすえ、2センチほど窓を開けて寝ている我が家。自らすきま風を作っているわけですから、そりゃ子供が風邪を引きます。因果応報というものです。

看病に追われるわ寒いわ、ただでさえ心がふさぎ込む事態になっているのに、1週間降り続ける冷たい雨。太陽と床暖房が恋しい。ここ数日ホームシックになりそうな心を奮い立たせて家事と仕事をこなし、寝込む子供の隣で読書して心を温めておりました。ブログもいたずらに更新が滞っているので、ブックレビューでもしてみよう、ということでまずは野球本から。

12球団すべてのファンクラブに入会し、その特典やグッズを分析。視点の面白さはもちろん、10年間で蓄積したデータは球団のファンに対する姿勢を如実にあぶり出していて興味深いことこの上ないです。先日帰国した際に日ハム戦を見るため久しぶりに西武ドームで観戦し、ファンの温かさと行儀のよさに感動したのですが、長谷川氏のつけたファンクラブ通信簿で1位にランクインしているのと無関係ではないでしょう。

著者の長谷川氏とは若いころよく飲みに行く仲だったのですが、「実は僕、自腹で12球団のファンクラブに入っているんです。これを続けることにしたんですよ」とカミングアウトされた時、まだ20代女子だった私は正直ちょっと引きました。自腹で12球団全部。マジかこの人?と。ただ編集者としての立場から見れば、素晴らしい試みだと思いました。誰もやっていないことをやる、という気概に感動もしました。この本が出た時は勝手に感慨に浸ったものです。「12球団ファンクラブ評論家」という肩書きを特許申請してしまう念の入れように、氏の本気を感じたのものです。

この本は既読だったのですが、昨日読んだ一冊を読んで「長谷川さんの本と同じやり方だ!」と思ったので改めて紹介しました。その一冊というのが、台湾に来てから友人になった編集者さんに勧められて読んだ、みうらじゅんの仕事術本。


〝あの〟みうらじゅんが仕事術を公開、しかもやり方としては至極マトモだったという衝撃はあるのですが、自分の好きなものから「ない仕事」を作り出す方法は「12球団ファンクラブ」と同じアプローチです。物やデータというのは、おぉ、と人を驚かせる量が集まった時に力を持つものなのだとつくづく思いました。

私はライターとして、ここまで(いい意味で)クレイジーに「好き」で押したことがないので、自分は「ない仕事」を作り出す力が弱いんだよな、つまり企画力低いんだよな、と凹みかけていた時です。あとがきに出てきた「アンチ断捨離」というコトバに私の目は釘付けになりました。

結局私は、価値基準がないものに肩入れし、そういうものを「マイブームだ」と言って買い、この先もずっと「アンチ断捨離」の余生を送るのでしょう。

アンチ断捨離ーーーーー。

この本を読んでいる間、本筋とは別のところで心がザワついていた理由がわかりました。「この大量に買い集めたゆるキャラグッズとか、いやげ物とか、どこに保存してあるんだろう。。。」何の役にたつのかわからないもので溢れた部屋を想像するだけでも怖い。私だったら途中で絶対やめるし、捨てる。でもこの本で言うところの「ない仕事」は、すべて大量のグッズ集めから生まれている。。。

実を言うと、クリエイティブディレクターの佐藤可士和氏が「整理は創造」と言ったのに感銘を受け、ここ数年せっせと断捨離していた私。海外在住で日本語の本を気軽に買えなくなったこともあり、10年前の私が「紙をめくらずに読書と言えるか!」と全否定していた電子書籍にも手を出しました。今思えばそこに主婦として、家をスッキリさせたいという至極まっとうな気持ちも働いていたと思います。

断捨離をした結果、たしかに頭も書棚も整理されました。でもあまりにも整理しすぎて、何かが生まれる芽すらも摘んでいたのではなかろうか。。。「アンチ断捨離」というコトバを見た瞬間、その現状に気づかされたのです。そうだ、そもそも私はクリエイティブディレクターじゃなかった!!

ふたたび野球本に話を戻すと、このジャンルは本当に読みたい人しか読まない、野球ファンでも読まない人は読まない分野なので、電子書籍化されていない本がほとんどです。「ダルビッシュ有の変化球バイブル」のように電子化されていても図解などが見にくくて、結局紙の本を買うことも多い。どんなに断捨離したくても捨てられないので、自然と書棚の野球本率が高まっていく。書棚にあって目につくからこそ、それがちょっとすごい量だからこそ、私は今日まで野球のことを飽きずに考えてこられたのではないか。。。

断捨離してる場合じゃない!と、まずは資料を机に山積みにしてみたりした年明けでした。今年は無駄をもっと愛そう。

ちなみにみうらじゅんが仕事術を公開しているからといって、フツーの人が明日から取り入れられそうな術を伝授したハウツー本とはまったく毛色が違うことを最後に書いておきます。やはり氏の着眼点と言葉選びのセンスは次元の違うレベルにあり、マイブームへの没頭と冷静なプレゼンのバランスは、(いい意味で)精神分裂の域です。いくら奥義を見せてくれようと、「やっぱりみうらじゅんは変。」という結論に至った、いたって凡人の私なのでありました。

2016年1月5日火曜日

な〜るほど・ザ・台湾1月号

台湾のホテルや観光地で手にはいる情報誌「な〜るほど・ザ・台湾」1月号で、製薬会社「京都念慈菴」と、93歳の台湾人・蕭鸞飛さんを取材させていただきました。



蕭さんは戦時中台湾日本兵として出征もされていて、時代に翻弄され激動の人生を歩まれたのに、その苦労をまったく感じさせない茶目っ気のある素敵な方でした。お土産にと持たせてくださった擂茶は、蕭さんも毎朝一杯飲んでいらっしゃるそうで、ご長寿にあやかって毎日飲んでいます。

台湾にいらっしゃる予定の方は、ぜひお手にとってご覧ください。

2016年1月4日月曜日

500元札に描かれた少年は今。

新年あけましておめでとうございます。

年末年始も台湾だったので、お正月番組は紅白と「中居正広のプロ野球魂」だけなんとか見ました。仮想ドラフト今年も面白かったですね。ダルビッシュとギータが3チーム競合になったり、筒香が指名された時は叫んでしまった。金子千尋と平田良介の対照的なキャラも見事でしたよね。2人が対戦する時にはみんながカーブを待つ2016年。ボヤボヤしてたら来年はWBCですね。そんなわけで今年もよろしくお願いいたします。

今回は台湾の500元札について。


台湾の紙幣に野球少年が描かれている、ということをご存知の方はどれくらいいらっしゃるんでしょうか。2013年のWBCで侍ジャパンが台湾代表と対戦した時、台湾における野球がどれほど身近なスポーツか、というわかりやすい例として日本のメディアでもちょこちょこ紹介されていたように記憶しています。

ただ、ここに描かれている少年たちがどこの誰なのか、台湾人でも誤解している人が多いんです。台湾野球史上もっとも有名な少年野球チーム「紅葉少棒隊」か、リトルリーグの世界大会で優勝した「金龍少棒隊」だろう、と思っている人がほとんどです。かくいう私もつい最近までそうでした。

彼らの正体を明かす前に、2つの有名な少年野球チームについておさらいしましょう。

台湾、野球といえば、映画「KANO」が1931年の嘉義農林高校甲子園準優勝を描くまでは、長らく「紅葉少棒隊」が歴史上最初の栄光として語られてきました。1968年、台湾少年野球大会チャンピオンだった台東の紅葉隊がリトルリーグ世界一の日本少年野球チームを招待して親善試合を行い、7-0の完封勝利を挙げたというものです。よくよく考えると親善試合だし、日本の少年たちは完全アウェーだし、という試合なのですが、当時はテレビ実況もされて台湾全土が熱狂したといいます。

台湾の少年野球は世界レベルだぞ、行けるぞ、と盛り上がっていたその翌年の1969年に、紅葉隊のメンバーを中心にしたリトルリーグの台湾代表チーム「金龍少棒隊」が本当に世界一になったんですから、それは大騒ぎだったでしょう。ちなみにこの時の「金龍少棒隊」メンバーには、中日ドラゴンズで活躍した台湾のレジェンド・郭源治さんも選ばれていて、活躍しています。

500元札に話を戻しましょう。


絵柄についての説明は「少棒主題(テーマ少年野球)」とされ、大っぴらにモデルは公表されて来なかったようです。台湾における少年野球栄光の歴史を表しているので、広い意味で言えば「紅葉少棒隊」であり、「金龍少棒隊」であると言えなくもない。でも画家が描いた架空のチームというわけではなく、ちゃんとモデルがいるんです。

その正体は花蓮の南王小学校で組まれた南王少棒隊。1998年に「關懷盃少棒錦標賽」という少年野球大会で優勝した時の様子、ということまで明らかになっています。なぜこのチームが選ばれたのか、今回調べた限りではわかりませんでした。絵的によかった、というのが有力だと思われますが、引き続き調査していきたいと思います。

それより何より1998年に小学生ってことは、今もまだ20代ではないですか!

そうなんです。この絵柄は遥か昔の1ページで、今ではすっかり現役を退き、それぞれ年を重ねているであろうと思われた紙幣の少年たち。実は彼ら、バリバリの現役選手だったのです!しかもそのうちの1人は先日のプレミア12台湾代表にもメンバー入りしたプロ野球選手だなんて、誰が想像できるでしょう。


そのプロ野球選手というのがこの方、統一7-ELEVENライオンズの内野手、林志祥選手。蘋果日報という地元紙で、ちゃんと取材されていました。500元札を持って、「このプロテクターつけてるキャッチャーが僕ですよ」と言っています。


「職業棒球」という雑誌でふるさとを訪れる企画に登場した時も、500元札のモデルであることが紹介されていました。


トドメ(なんのトドメだろう)はこの解説図。ウィキペディアで「臺東縣南王國小少棒隊」を検索すると出てきます。ちなみに一番左の黃佳明くんの方が先にプロ入りしたけれど、ケガに泣いて早々とプロの舞台から姿を消してしまったようです。

林志祥選手は2011年にプロ入り。2015年の台湾プロ野球でベストナイン、ゴールデングローブ賞にも輝いた左バッターです。これを機に注目してみてくださいね。統一7-ELEVENライオンズは今年から郭泰源氏が監督に就任しました。おそらく郭氏は2017年のWBCでも監督を務めることになるでしょうから、采配も見どころです。